Brauer群

中心的単純環とは体上のベクトル空間と(一般には非可換な)環の構造を併せ持つ「体上の代数」の中で,ある意味で最も単純な構造を持つものの一群です.例えば体K上の行列環M_n(K)はK上の中心的単純環であり,Hamiltonの四元数体HはR上の中心的単純環です.体K上の中心的単純環全体をある同値関係で割った集合はKのBrauer群と呼ばれるAbel群をなしますが,実はこれはKの内部構造を深く反映しており,Kを変えるごとに様々に異なる群が現れます.本稿ではこのBrauer群の基本的な性質を紹介します.